日本も中国も高齢化が進み、医療や介護を必要とする人々の数が急増しています。

 そんな中、医療体制のひっ迫が社会問題となっている中国で、世界が驚くような新たな展
開が見られるようになりました。

 何かと言えば、世界初となる「AIロボット病院」が2024年の後半に誕生するという
のです。

 これは北京の清華大学の研究チームが開発に関わったとのこと。

 「1台のロボット医師が1日平均3000人の患者を診察できる」との触れ込みです。
ということは、3日間で1万人近くの患者を治療することになるわけで、まさに前代未聞
の医療革命と言えるかも知れません。

 問題は、ロボット医師による診断や治療の正確度でしょう。

 しかし、アメリカの医師免許取得に関する国家試験と同様な問題に対して、こうしたロボット
医師は人間の医師志願者をはるかに上回る好成績で合格点を得ているとのこと。

 現在の過酷な労働環境の下では人間の医師による判断ミスや医療過誤が後を絶ちません。

 アメリカでも日本でも、状況は似たようなもの。
 「3時間待たされて、診察時間はたったの3分」といった厳しい医療体制にメスを入れよう
というのが今回のAIロボット病院の狙いに他なりません。

 患者の悩みや不安に寄り添うだけの時間的余裕のない医師があまりに多くなっているため、
窮余の策なのでしょう。

 問診、検査、診断、処方、治療、経過観察など、一連の医療行為をAIロボットが93%を
超える正確性で対応してくれると宣伝されています。

 生身の医師であれば、時に感情的になったり、袖の下を要求するなど、様々な問題が指摘
されてきました。

 そうした課題を一掃し、正確で迅速な判断を下し、金持ちだろうと、一般の病人であろうと、
分け隔てなく診てくれるというのです。

 当然、1日24時間、1年365日、文句も言わず、働いてくれるのが強みとなります。

 その上、お互いに患者のデータを瞬時に共有することで、その地域での感染症など病気の
広がり具合などを予測することも可能になると言うではありませんか。

 まさに「願ったりかなったり」ということでしょう。

 とはいえ、「好事魔多し」ということもあり得る話。

 AIロボットであれば、外部からのシステム攻撃の対象になることもあり得ます。

 また、ロボット医師ですから、もし患者が言うことを聞かないような場合には、患者を力ずく
で押さえることもあるかも知れません。

 そうなれば、生身の人間ではとても太刀打ちできないでしょう。

 便利で効率的な診療がうたい文句ですが、血の通っていないロボット医師に全面的に頼ることには
抵抗感を覚える患者も多いのではないか、と危惧するばかりです。

 もちろん、今後の医療技術の進歩や人工知能の進化を考慮すれば、中国で間もなく誕生する「AIロボット
病院」が世界のモデルになる可能性は否定できません。

 と同時に懸念や不安材料もあるわけで、日中両国の専門家による問題解決に向けての連携も視野に入れて
おく必要がありそうです。

 実は、今年は周恩来元首相が提唱した「平和共存5原則」発表から70周年にあたります。

 人類が直面する様々な課題に対して、「人類運命共同体」との発想で解決の道を探ることが改めて
問われる年に他なりません。

 感染症対策を含め、医療の分野での国際協力が欠かせない時代ですが、そこに人工知能をどう組み込む
かも喫緊の課題と思われます。

 世界に先駆けてAIロボット病院を立ち上げようとする中国の革命的な取り組みが成功裡に進展するためにも、日本を含め国際社会が英知と技術を結集するチャンスにしようではありませんか。