71歳の誕生日を迎えたばかりのロシアのプーチン大統領ですが、元気一杯のようです。
今年で20回目となったソチで開催されたバルダイ国際討論会では大演説をぶちました。曰く「ロシアが中心となり、新たな世界を建設する」。その自信のほどに参加者も世界のメディアも圧倒されたものです。ネット上では「プーチン死亡説」や「プーチン替え玉説」が賑やかですが、いずれも根拠は希薄で、フェイクニュースの域を出ません。
実は、娘の一人は医師で、父親の延命長寿に全身全霊で取り組んでいるとのこと。出身地のサンクトペテルブルクには世界に冠たる「延命長寿研究所」を立ち上げ、最先端の医療を提供し、プーチン大統領やその支持者をサポートしている模様です。
日本をはじめ、欧米諸国では「ウクライナ戦争に足を引っ張られ、プーチンは青息吐息だ。ロシアの終わりの始まりが見える」といった論調が主流となっていますが、ロシアの経済はIMFの分析でも「欧米をはるかに上回るGDPの成長を見せている」とのこと。
アメリカを中心とするNATO諸国は、何かとロシアを敵視し、ウクライナでの代理戦争を通じてロシアの力を削ぎたいと願っていることは間違いありません。そのため、どうしても希望的観測から「ロシア崩壊論」に引っ張られる傾向が顕著です。
しかし、原油や天然ガスなどエネルギー資源の豊富なロシアは中国やインドなどに大量の輸出を重ね、経済を順調に回しています。アフリカなど「グローバル・サウス」諸国にも穀物や肥料などを大々的に輸出しているのです。
プーチン大統領とすれば、ハマスがイスラエルに大規模なドローン攻撃を仕掛け、大勢の死傷者が発生していることも、「アメリカの中東政策の失敗だ。ウクライナへの支援も同じ結果になるだろう」と一刀両断。
そんなプーチン大統領の自信の源泉にあるのは「柔道で鍛えた肉体」と「茶の湯で体得した平静心」と思われます。柔道に関しては、自身が黒帯の有段者であり、日本の山下泰裕選手との交流も有名です。
しかし、茶道についての思いはほとんど知られていません。意外に思われるでしょうが、プーチン大統領は中国、ロシア、モンゴルを結ぶ「お茶の道構想」を推進しています。2023年末までには「お茶を通じた平和と安寧の世界」を目指すという意気込みです。
そうした構想を吹き込んだのは、裏千家元家元の千玄室大宗匠に他なりません。千利休が唱えた「和敬清寂」は、戦いのさ中にあっても、一服の茶の湯の心を大切にすることで、平和への道が開かれるという発想です。日本に限らず、中国にもモンゴルにもお茶の文化は根付いています。
1923年生まれで、今年100歳を迎えた千玄室氏の存在と教えはプーチン大統領の心を捉えて離しません。「老いてますます盛んなり」。プーチン大統領は医者である娘からは現代医学に基づくアドバイスを受けていますが、最もほれ込んでいるのは、柔道と茶の湯の心なのです。
思えば、本年6月に70歳となった中国の習近平国家主席へ、1歳年上のプーチン大統領は祝電を送りました。その中で、「多くの中国人民を貧困から救いあげた習近平、あなたは素晴らしい指導者だ。ロシアと中国が手を結べば、世界はより安全で豊かになる。共に手を携えて前進しよう」と、熱烈な気持ちを込めて書かれたものです。
実際、それまで日本の中古車が席巻していたロシア市場は、今では中国車が圧倒的な存在を占めるまでに急拡大しています。また、ロシアから原油や天然ガスなどエネルギー資源を中国は安く輸入しているわけです。
他方、間もなく81歳となるアメリカのバイデン大統領ですが、トランプ前大統領からは「文章を2つ続けて発言できない老いぼれぶりで、俺とは勝負にならない。来年の大統領選挙にバイデンは出馬できないだろう」と、散々にこき下ろされています。
財政赤字が鰻登りで、ウクライナ支援どころか、自国の防衛やインフラ整備にも予算を配分できないのが、今のアメリカです。プーチン大統領からすれば、分断や分裂が進むアメリカは、遅かれ早かれ、自滅する運命で、その最期をロシアの核ミサイルで早めてやろう、といった思いが強いものと推察されます。
とはいえ、もし、そんな事態になれば、消滅するのはアメリカに止まらず、地球や人類の終わりになりかねないのですが。ウクライナ戦争に加えて、イスラエルとハマスの戦争が勃発し、このままでは第3次世界大戦も起こり得ることが懸念されている今日この頃。人類と地球の生存が問われていることは間違いありません。プーチン大統領を魅了したように、世界の人々が茶の湯を通じて心を通わせる機会を持つ時ではないでしょうか。