2024年は新年早々、日本では能登半島大地震が発生し、甚大な被害をもたらしました。地震大国と呼ばれる日本ですが、被害者への救援と早期の復興を願う ばかりです。幸い、国内はもとより、各国からも義援金や援助物資が届けられています。
実は、北朝鮮の金正恩総書記からも、お見舞いの電報が岸田首相宛てに届きました。東日本大震災の時にもなかったことで、岸田首相もビックリしたようです。
とはいえ、このところ北朝鮮内でも前代未聞の事故や災害が頻発しています。厳重な情報統制が行われているため、そうしたニュースは外部にはほとんど伝わってきません。その代わり、ミサイル発射実験に成功したとか、韓国との統一は反故にし、核兵器を使ってでも併合する、といった強硬な発言のみが報道されています。
しかし、北朝鮮の国内では、食料や医療品の不足が深刻化し、国民の間での不満が鬱積している模様です。その上、昨年末にはピョンヤン発の列車が電力不足で急こう配を登り切れず、脱線し、数百人の乗客が命を失ったとのこと。
去る1月16日に行われた金正恩氏の年頭演説でも、わざわざ「列車の安全運航に万全を期す必要がある」との言及がなされたほどです。もちろん、列車事故そのものを認めたわけではありませんが、国民の間にくすぶり続ける「民生軽視の軍事増強」への不信感を意識しての発言と思われます。
脱北者によれば、大洪水など自然災害の影響で、電力不足は言うに及ばず、食糧生産が滞り、栄養失調者や餓死者も急増している模様です。中でも「電力の地域間格差」は深刻さを増しています。
首都のピョンヤンは恵まれていますが、それ以外の地方では電力供給は1日数時間といった具合です。1月1日の元旦でさえ、電気が使えたのは6時間以下だったといいます。工場や病院をはじめ政府の主要機関には優先的に電力が供給されているため、一部の住民はワイロを払って、産業用の配線から個人宅への電気の横流しを受けている模様です。
とはいえ、北朝鮮の警察は取り締まりを強化し始めました。ワイロを受け取った政府職員や支払った住民は強制収容所に送られることになります。寒さの厳しい冬場に電気がこなければ、体調を崩すケースも多いはず。
金正恩氏は「経済改革、特に民生部門の強化」を年頭から打ち出し、「わが国の経済状態は非常に憂慮すべきだ。大半の国民が食糧や基本的な生活物資を得られるようにしなければならない」と述べましたが、今のところは掛け声倒れの感が否めません。
なぜなら、2020年10月のTV演説でも「わが国民は自分を信頼してくれており、その気持ちは空のように高く、海のように深い。そんな国民の期待に応えることができず、本当に申し訳ない」と涙ながらに謝罪していました。
残念ながら、ミサイル発射や地下核実験には成功しているようですが、国民の日常生活を安全で豊かにするという目標は絵に描いた餅に終わっています。そのため、特に若い世代では「金正恩体制への懐疑心」が広がっているとのこと。
そうした国内の不満分子を一掃しなければ、この1月に40歳になったばかりの金王朝3代目の先行きも怪しくなるでしょう。結果的に、国民の危機意識を高めるため、「アメリカが後ろ盾となって、南をたぶらかし、我らが祖国に攻撃を仕掛けようとしている。今こそ一致団結して、南を支解放しなければならない」といった「敵を外に見出す」作戦に舵を切ったようにも見えます。
そんな中、「金正恩氏は10歳の娘を自らの後継者に決めた」といった韓国政府の分析が話題を呼んでいます。名前も正確な年齢も確認されていない「ジュエ」なる少女を跡継ぎに決めることなど、本当にあるのでしょうか?これこそ、北朝鮮の得意とする「かく乱工作」の一環のようにも思えてなりません。「可愛い娘を大切にする父親が戦争などを引き起こすことはない」という方向に世論を誘導しているだけのことかも知れません。