「創設75周年の国連総会でのアメリカ対中国・ロシア連合の対立」

名誉会長 浜田和幸

国連事務総長のグテレス氏も頭を抱えてしまった。国際協調の場であるはずの国連で、安全保障理事会の常任理事国同士が激しい「言葉のミサイル」を打ち合うことになったからだ。

9月22日からニューヨークで開幕した国連総会だが、世界での感染拡大が収まらない新型コロナウイルス(COVID-19)の影響で、国家元首による演説はすべて事前に収録されたビデオ上映という形で行われている。110か国の大統領や首相が演説を繰り広げているが、問題はその中身である。

世界各国で感染者が3000万人を突破したCOVID-19に限らず、環境問題や人権問題など難問山積みであるため、グテレス事務総長は「こうした課題に取り組むには多国間の解決策が欠かせない」と各国へ協調を呼びかけていた。ところが、初日に登場したアメリカのトランプ大統領も、次いで登場の中国の習近平国家主席やロシアのプーチン大統領も対決姿勢を鮮明にしたからだ。これでは国際平和や協調外交は「絵に描いた餅」で終わることになりかねない。

中でも、激しい言葉で中国を攻撃することに演説の大半を費やしたトランプ大統領は異常としか思えなかった。加えて、敵対するISISの指導者バグダーディ師やイランのソレイマニ司令官を抹殺したことを大きな戦果として自慢。その上で、アメリカが対立するキューバ、ニカラグア、ベネズエラでの政権交代をも要求するというエスカレートぶりだった。

これでは世界の課題に協調して取り組み、対立や戦争を防ぐ目的で設立された国連憲章が泣くというものだ。しかも、演説の最後は「来年、我々がここに集う時には、世界は史上最良の日々の中にいるだろう」と、自らの大統領選での再選をアピールする自己中ぶりを遺憾なく発揮した。

一方、習近平国家主席やプーチン大統領は国際協調や多国間主義を強調する内容で、トランプ大統領とは対照的なものであった。習主席曰く「突如襲来した新型コロナウイルス感染症が全世界にとって厳しい試練となっている。人類は既に相互接続の時代に入っており、各国は利害が一致し、運命が緊密に結びついている。グローバルな脅威と試練にはグローバルな力強い対処が必要だ」。ポスト・コロナ時代を見据えた国連の役割を議論すべきであると正論を展開。「一国主義」の危険性にも警鐘を鳴らした。

ところが、対照的にトランプ大統領は「アメリカの繁栄こそが世界の自由と安全を保障するものだ」という「アメリカ・ファースト」に固執し、世界の国々にも「アメリカを見習って、自国優先でいくべきだ」との持論を展開。実は、COVIDは2017年の段階でアメリカが生物化学兵器として開発したもので、そのワクチンも既に同時に準備されていたものである。

これまで公にされていないが、2019年11月の時点でトランプ大統領はそのワクチンの接種を終えていた。しかも、念のため、NASAが開発した万年筆サイズの病原菌防止の噴霧器も常に胸ポケットに忍ばせているのが「トランプ・ファースト」の実態である。「マスクは要らない」と、自信たっぷりに発言するには理由があったわけだ。

その上で、トランプ大統領は軍事力の増強に力を込め、「過去4年間で軍に2兆5000億ドルを投入し、世界最強の軍を作り上げた。米軍の兵器はかつてないほどの高水準にある」とPRに努めたのである。あたかも、軍事兵器のトップセールスマンのようでもあった。恐らく、これも自身の再選に向けて、アメリカの軍需産業を味方につけようとの魂胆に違いない。

他方、習近平国家主席は国連のウイルス対策に5000万ドルを追加で拠出し、国連食糧農業機関(FAO)にも“南南協力”の目的で5000万ドル規模の拠出を約束した。また、プーチン大統領は自国で開発した世界初と豪語するコロナワクチン「スプートニクV」を国連職員には無償で提供するとも提案。

両陣営の発想の違いは余りにも鮮明であった。もちろん発言には行動が伴わなければ意味がない。しかし、行動の原理となる“言葉”において、「自国最優先」と「人類運命共同体の推進」とでは、比較にならないだろう。確かに、国際紛争の解決に関して国連の限界も指摘されてはいるが、他に代替手段がない現状からすれば、現存する国連の機能をいかに強化すべきか、その具体的な方策を虚心坦懐に議論すべきであろう。

その意味では、今回の記念すべき創設75周年の国連総会での演説合戦の勝者は自ずと明らかである。現時点では、日本の菅義偉新総理の演説はまだ流されていないが、未曾有の危機に直面する人類が安全と安心な環境を取り戻し、相互信頼と協力の下で暮らせるような道筋を示して欲しいものである。